歯周病と全身疾患との関わり
歯周病は口腔内だけの問題ではなく、歯周病菌をはじめとする口腔内の細菌が全身に様々な影響を及ぼすことなどが最近わかってきました。
誤嚥性肺炎…日本人の死因の1~3位は三大疾患
(ガン、心疾患、脳血管疾患)ですが、それに続く4位が肺炎です。 65歳以上では死因の1割を占めます。高齢者の肺炎は、主に誤嚥(ごえん。口の中の唾液、食べ物が気管の中に入り込むこと)によって、口の中の細菌が肺にまで達し炎症を引き起こすことがわかってきました。 年齢的な衰えによって口の中の細菌が気管や肺に入りやすくなることがわかっています。日常の歯磨きや入れ歯の清掃などを十分に行っていないと、口の中の細菌は繁殖を続けます。口の中をきれいにして細菌を減らすことで、誤嚥性肺炎のリスクを低減(半減)させることができると考えられています。
動脈硬化…歯周ポケット内には多量の歯周病菌をはじめとする細菌が棲息していて、炎症で歯周ポケット内の上皮が薄くなると、細菌は簡単に血管内に侵入していきます。血管内に歯周病菌が侵入すると、動脈硬化が悪化することが実験で確認されています。動脈硬化が進行すると狭心症や心筋梗塞といった虚血性心疾患や脳梗塞といった脳血管疾患になりやすくなります。
心臓疾患…前述の動脈硬化による狭心症や心筋梗塞といった虚血性疾患に加え、心臓の弁に障害のある方では、血液中に入った細菌が弁に付着して増殖し、細菌性心内膜炎を引き起こすことがわかっています。
早産…日本においてその関連性はまだ確立されていませんが、最近の世界各国からの報告では、歯周病は早産に対しては2.3倍、早期低体重児出産に対しては5.3倍の危険率があるとされています。
糖尿病…以前から、糖尿病患者では歯周病が発症・進行しやすいことが知られていましたが、最近の研究では逆に、歯周病が糖尿病に悪影響を及ぼすということもわかってきました。実際、歯周病の治療で糖尿病が改善する場合があります。
骨粗鬆症…骨粗鬆症と歯周病の関連性については、多くの研究が報告され、その関連性を示唆する報告も多数ありますが、まだ確実なものとはいえません。しかし、閉経後女性の歯周病患者では骨粗鬆症の検出率が高く、女性ホルモン欠乏により、閉経後に発症した歯周炎の進行過程の影響を及ぼすことが考えられます。
(参考文献 『歯周病と全身疾患』 ヒョーロン)